黄泉比良坂より

あらすじ

時は1933年浅草。

関東大震災により大打撃を受けたかつての遊楽街は、徐々に復興の兆しを見せ始めていた。レビューショーに胸躍らせ、カフェやダンスホールで人を集い騒ぐ。そんな楽しい時間が当然のように流れるようになっていた。

そんな庶民の盛り場に、細々と流れる噂がある。

文豪、猪俣廣次(イノマタ ヒロツグ)。その非公開の遺作が、浅草の街のどこかに隠されているというのだ。熱烈なファンの多い猪俣の作品を見つけ出すことができれば、巨額の富になることだろう。暇を持て余した遊民や若者、また当の熱烈なマニアたちも、ひそかに猪俣の遺作を探し浅草の街を歩く。

前情報

PL3人、テキセ、RP多め:12時間くらい?

オフセ、ボイセならば3・4時間くらいでしょうか

推奨PL人数:2~4人

推奨技能:目星 聞き耳 図書館

準推奨:戦闘技能 交渉技能 心理学

大正シナリオと言ってますが実質昭和初期です。

時代考証なってませんので、詳しい方はそれらしく色々と付け加えてください。それと地方住のため東京の地理がわからない! 地図や場所の設定もご自由に。


重要人物

猪俣廣次(イノマタ ヒロツグ)

怪奇小説で有名な作家。精神交換を行われた者の末路を描いた作品、神を崇拝するあまり魚人となってしまった者の話、人食い生物の村の話など、不可思議な生物と人間との邂逅を描いた作品で名が売れ、文豪とまで呼ばれる。

12年前(当時28歳)から小説家として活動をしていたが、8年前(当時32歳)まではまったく売れない作家であった。娘を亡くし妻が発狂し異形を召喚し幼子になるという現実離れした出来事が起こるたびにSAN値を削られていた。また、夜鬼が近くにいた弊害か、神話生物によって引き起こされた恐ろしい物語を夢に見るようになる。それを小説として描き始めたところ爆発的に売れていった。しかしその間も着実に狂気に染まっていく。あきらを家の地下に監禁し面倒を見ていたが、五年前についに狂気に耐えきれず首を吊って死ぬ。晩年は自分の身に起こったことを書き綴ったエッセイを執筆していたが、死の直前に原稿をどこかへ隠してしまう。これが遺作である。呪文は晶子が持っていたものであり、遺作ではない。

猪俣晶子(イノマタ ショウコ)

晶子というのは娘の名前。本名は「猪俣あきら」。本物の晶子は10年前の関東大震災で5歳にして亡くなった。偽物の晶子は17歳くらいに見える。

10年前に関東大震災で溺愛する娘を亡くし宗教にはまりこむようになる。売れない小説家の夫、廣次にたいする不満はたまる一方で、男にたいする不信感を募らせる。特に日本書紀に登場するイザナミに傾倒し、同じ女としてイザナミを信仰し祈れば、黄泉平坂より娘晶子を返してもらえるのではないかと考えるように。

昔から通っていたカフェでそんな話をし魔術師である布由乃に目をつけられる。イブ=スティトルのことを聞かされ、冥府をつかさどる神=イザナミであると思い込み信仰するように。これを召喚し触れてしまったことで、神話生物に関する記憶と熟した肉体を失い、幼子となってしまう。その際に夜鬼を数匹従えるように。その後は猪俣により地下で育てられる。夜鬼の召喚は引き続いており猪俣家のまわりには夜鬼が出る。行方不明者が多いのはそのため。

若返ってからは猪俣家の地下に監禁されていた。記憶も年齢とともに奪われていたが、監禁されているという状況から夫に対する嫌悪感を強めていた。猪俣の死亡を確認したのち布由乃に保護される。布由乃により失った記憶を教えてもらい、再度イブ=スティトルを召喚し晶子を生き返らせようとしている。そのためには遺作と呼ばれている召喚の呪文を探さなくてはならない。猪俣の遺作を探している連中を使って見つけ出そうと彼らに声をかけ、三日以内に見つけられなければ魔術師によって消させる。(実は娘は死んでいるという事実を知られるため)

STR:8 CON:11 POW:13

DEX:7 APP:12 SIZ:12

INT:16 EDU:16

耐久:11 MP:13

心理学:80

布由乃(フユノ)

魔術師。帝都で外国にたいして不信感を抱いている人間に呪文や神話生物にかんするやり取りをしている。情報を集めたり人が集うのに都合がいいのでカフェを経営している。が、その実態は魔術師の集会所。軍人や政界の重鎮も立ち寄る。

(ヴィザージュとは、顔、容貌という意味。カフェという外観だけ整っている、という意味でつけている。夜鬼の異名、「顔のないもの」からも)

猪俣夫妻は単なる常連だったが、あきらが狂気に染まっていくのを見て、夜鬼を召喚し手持ちに加えるのに都合がよいとイブ=スティトルを信仰するよう勧める。イブ=スティトル召喚の呪文を教えるがあきらが記憶の喪失、また猪俣により保護されたことで接触できなくなってしまう。イブ=スティトルに接触したことで現世に残された夜鬼はあきらのもとにおり、それを回収したいと考えている。

猪俣発狂、死亡後あきらを引き取るが、彼女がいまだ晶子の反魂を望んでいることを知り力を貸している。呪文は彼女が翻訳したものであるが、新たに翻訳してあきらに渡そうとは思っていない。なぜならば、彼女はあきらの味方なのではなく魔術によって世界が混乱することが目的なので。彼女が自分の力で探し出せなければ見捨てる。

探索者がロストした場合、彼女により夜鬼の大量召喚が行われ日本は未知の生物を率いて海外へ攻め入るだろう。

心理学:95

探索者が晶子を疑っている様子がある場合、彼女から晶子にその情報がばれ夜鬼の標的になる場合がある。


導入

PCたちは文豪と呼ばれている猪俣廣次の遺作を求めている。

この小説家は怪奇小説が有名。

遺作は高値で売れるだろう。また、彼の熱烈なファンであるならば命を懸けてでもほしいと思うかもしれない。

探索者たちは社交クラブの友人同士であったり、同潤会アパートの住人同士かもしれない。なんにせよ猪俣の作品に興味があることで、ともに彼の遺作を追い求めることになるだろう。

浅草はここ数日雨が降り続いている。大変強い雨で、洪水が心配されている。

三日後に台風が近くを通るらしい。

情報収集

・猪俣が死んだのは5年前

(図書館などで)

・有名な作品として、精神交換を行われた者の末路を描いた作品、神を崇拝するあまり魚人となってしまった者の話、人食い生物の村の話など。

・世間に発表されていない遺作が存在するという噂は彼の死後すぐ流れた。彼の書生が語っていたらしい。

(近頃の浅草について調べる場合)

・震災により身寄りのない浮浪者が増えている。孤児も多い。

・ただ、ここ数年行方不明者が多い模様。とはいえ浮浪者などはいなくなったとてたいしたことはない。事件として騒がれはしないが、一部では話題になっている模様。(晶子の夜鬼が勝手に連れ去っている)

(新聞など)

・コラムの内容は、夢の世界について。

 「慣れ親しんだ空気は魔だ。馴染みのカフェー、ヴィザージュで一杯の珈琲と共に次作について思考をめぐらすのは至福の時であるが、作家猪俣廣次にとっては大打撃である。街行く人波を眺める私のもとには、作品の構想ではなく夢の世界が下りてくる。恐ろしい異形、残酷な怪物、目の据わった狂人たち。そんな悪夢たちに脳髄を揺さぶられ、手元の布巾には物語が書き綴られる。魔の眠りが、私を作家たらしめる」とかなんとか

・一時期新聞でコラムを書いていたことがある。そこに馴染みのカフェの名前が。「カフェー=ヴィザージュ」というらしい

(ラジオ)

猪俣作品の朗読が行われている。宗教に狂った女が夫を殺し神に娶られる話。

朗読の最後に、「猪俣さんはカフェー・ヴィザージュというカフェによく行っていたそうですね」なんて話がある。

カフェー=ヴィザージュ

カフェー・ヴィザージュはもう20年続いているカフェ。かの関東大震災の折にも被害なく存続している。昼はレストラン、夜は若者集うクラブになる。

ジャズの流れる雰囲気のいい店内に若人が集っている。

店主は布由乃という女性。猪俣とは親しくカフェには彼の作品が置かれている。

給仕に一人の少女がいる。猪俣の娘と名乗る。名前は晶子。17歳ほど。

「父の遺作を自分も探している。父は気が違ったようにして死にました。父が死の直前に何を思っていたのか知りたいのです」

カフェとの関係について。「カフェで働きだしたのは父が亡くなってからですが、その前から住まわせてはもらっていました。父は晩年、私のことを母と勘違いしたり、お前は誰だと追い出されたり...。なので、ここに匿っていただいてたんです」

けなげな様子。かわいい。彼女の取り計らいで猪俣のもと書生にアポがとれる。

布由乃は快く送り出してくれる。しばらく休みでいいよとか。おおらかなお母さんというかんじ。

会話をしていると、浮浪者が近隣にいて鬱陶しいと愚痴をこぼす。店から出る食べ物目当て? とか。

猪俣の作品を読もうとするなら一冊につき三時間経過。ただし作品の内容を知っていておかしくない人ならばあらすじ程度知っていてもよいし一時間に短縮可能。しかし後述の作品はマイナーなため読んでいない。知識等で、それがマイナーだと知っていて手にとってもよい。目星で、一冊だけ読み込まれた様子もなく置かれているものが見つかる。

「災禍への追悼」という作品。仏間から降りられる家の地下に白痴の女を匿い、その世話をすることで精神をすり減らしていく男の話。「そのまろやかで生白い頬を撫で上げ、私はその女と過ごした日々を思い返す。私をすり抜け見つめるいとけない瞳に生気はない。その女はもはや私のことを、また私との間に起きたすべてのことを、珈琲に混ぜ溶かしたシュガァのように消え落としてしまつているのだろう」という描写が目に入る。物語の中で男は最後に正気を失い首をつって死ぬ。

アイデアで、この作品が猪俣の怪奇小説の走りというのが気にかかる。地下に何かあるのか?これは経験談か?と思う。想像してSANチェック。 0/1

夜に訪れると、知識人が多く集まっているのを見ることができる。奥の広間で著名な人が集まっているらしい。(政治家や軍人など。魔術師も集っているためあまり奥まで調査しようとすると危険な目にあうこともあるかもしれない)


書生

福浦八州治(フクウラ ヤスジ)。今は小説家として生計を立てている。探偵小説を書いている。

彼の作品が映画化しており、会いたいという話をすると映画館で落ち合おうと提案される。小説が好きな探索者ならば八州治のことも知っているだろうし、映画も喜んでみたがることだろう。

晶子と簡単に挨拶。(八州治は晶子のことを知らない。カフェー=ヴィザージュの店員からの案内で人が来ることが多いからその関係だと思っている)八州治は猪俣が売れ出してから(7年ほど前から)通い書生をするようになった。晶子のこともあきらのことも知らない。

「猪俣さんの作品は素晴らしかった」

「本当によくしてくれたが、晩年は何かにとりつかれたようだった」

「そのころに何かを書いていたのは知っている。けれど亡くなってから私物を確認しても作品らしきものはなく、作成途中の小説があるはずなんだと十紀子さんに話したのが広がってしまったらしい。遺作の話はここから出た話だ」

「自分は怪奇小説を書き始めた後から弟子入りした」

「書生というが弟子というのが正しい。食事の世話をするために家に行く程度。昔は女中がいたが今はもう死んでいる。僕より士族の安納さんのほうがよく知ってるくらい」

「......そういえば、猪俣先生は健啖家でね。一人では食べきれないくらいの食事を作ってほしいとよく言われたよ。次に伺うともう食べきっていて、驚いたものだ」

「猪俣先生の第一発見者は僕だ。先生は自殺で、仏間で首を吊っていた」

「葬儀は僕がしたよ。当時一番近しかったのは僕だったものだからね」

よどみなく答える。

心理学であまり積極的に答えてくれるわけではないかんじ。

書生のもとに遺作についての情報を聞きに来る人がことごとく連絡取れなくなるから。しかしそれをPCに言って不快な思いをさせるのも本意でない。


編集者

猪俣の本を読めば、出版社の名前が分かる。交渉ができれば猪俣の編集者だった十紀子(トキコ)というモダンな女性編集者と会うことができる。若く見えるが二児の肝っ玉母ちゃん。18時以降は連絡がつかない。

猪俣が小説家になったばかりのころからの編集者。今は八州治の担当である。

晶子はこの人に会いたがらない。何かと理由をつけて逃れる。(彼女は本物の晶子がすでに死んでいることを知っているため)

「実はねェ、有名な怪奇小説は3年の間に書かれたものなのよ。8年前までの作品はあまり売れなかったわね。それより以前は、蝶野ヒロと名乗って小説を書いていたわ」

(ここで小説の内容をしることも可能)

「遺作については私も知らないわ。猪俣さんは、怪奇小説の相談を私にはしなかったのよね。福浦君が何か知っているかも。遺作があるのだと言い出したのは彼だったから。マ、見つけられなかったのだけれどね」

「もし見つけたら是非教えて。高値で買い取って出版するわ。あの人の最後の作品は、彼の作品に惚れ込んだ人皆で慈しまなければならない。......コレクターを名乗っている馬鹿な小金持ちに売られでもしたら目も当てられない」

「災禍への追悼」を読んでいれば。

「新しい作風だと思った。それまで良くも悪くも無難で硬い作品だったから」

「かなり切羽詰まった様子だった。それまであまり評価されていなかったからしかたないかもしれないけれど」

「鬼気迫る表現。まるで実際の出来事のよう」

猪俣の娘について聞くならば

「...あの恐ろしい震災で亡くなったそうよ。かわいそうにね」


資産家

猪俣マニアの成金。安納(ヤスナ)。起業して一発あてたため家督は息子に譲り、今では高等遊民ぶっている。晶子が死んだのち猪俣のファンになったため、猪俣の娘や昔の猪俣夫婦のことは詳しくない。

とても贅沢なお屋敷。調度品は見る人が見れば一級品のものばかりである。流行の歌が蓄音機から流れ、上品な雰囲気を醸し出している。

作品は当然すべて手にしている。頼めば読ませてくれる。

猪俣の生活に詳しい。金銭の援助もしていたようで、パトロンとしての立場を利用して何度も会っていたよう。

「8年前に奥さんが亡くなったそうだな。仲睦まじかったからショックだったのだろう。廣次氏はずっと眠りが浅くうなされていると言っていた」

「夢の内容を小説にしていたらしい。悪夢ばかりだと笑っていたが」

「遺作については、ぜひ手に入れたいし目にしたいと思っている金に糸目は付けない」

「彼と最後に会ったのは彼が死ぬ三日前だったか。体調こそ悪くはなさそうだったが、青白い顔をしていて何度かしっかり眠っているのか尋ねたな。あれほどの文豪が、残念だ」

「そのときにそれまでの作品の草案を渡されたんだ。自分よりも安納さんが手にしていたほうが価値もあるだろうとね」

大量の紙を見せてくれる。

実はこのなかにイブ=スティトル召喚の呪文が隠されている。猪俣の地下で日記を読んでいればアイデアで意識的に探すことができる。何もなければ図書館半分で見つけることができる。

紙の束であり、翻訳し書き写したものであるようだ。一番上にはタイトルらしい文字、「クタート・アクアディンゲン」。内容を読むのならば二時間かかる。図書館成功で30分でおおよその内容を理解することとする。SANC 1d2/1d4 神話技能3%獲得

イブ=スティトルの部分が「イザナミ」とされており、そこだけ読むとイザナミ招来の呪文、と読める。筆跡はPCたちの知っているものではない。(布由乃があきらに翻訳したもの。イザナミを信仰するあきらのためのものなので書き換えてある)しかし呪文の部分はラテン語で書かれているため読むことはできない。

イブ=スティトル(イザナミ)とはどういったものなのかの説明が書かれている。「この神格は現世とはいいがたい世界の真ん中で、すべての時とすべての空間を見ている。そのうねる外套の下では彼の神の配下が温情を求め蠢きいている。神に触れたものはその悲願を聞き届けてもらうことがかなうだろう。ただし、かの神は信奉者の体に何かを与え、もしくは奪うだろう。それは時であったり、記憶であったりする」

「この神の血液もまた意志をもったものである。ただし、多量の水に弱く、飲まれるようならば神のもとへ還ることだろう」

晶子に見せると「なんでしょうね?」と言いつつ喜んでいる。持っている人物が一人になると途端に夜鬼に襲われることになる。

安納に紙束を見せると、「これは資料であって遺作ではないんじゃないか? それに、この字は猪俣氏の字ではないぞ」と教えてくれる。

紙束を借りるならば交渉技能。

人等について尋ねるなら

「ヴィザージュは廣次氏の行きつけの店だったが、あまりよい噂は聞かないね。若者が集う店ではあるんだろうがね、何やら裏で色々なところとつながっているそうだよ」

「十紀子氏? 彼女は元気かな。彼女が担当している八州治くんの作品は、悪くないが胸が騒ぐものが少ないね。また小説について語り合いたいものだが、彼女は私を毛嫌いしているから」

幸運に失敗で、帰り際蓄音機から不気味な音楽が流れ始める。不快感を煽る、嫌な旋律だ。0/1のSANC

知識などで「暗い日曜日」であるとわかる。これはこの間発売禁止になった曲だ。安納は探索者に謝るだろう。(ただのSANCと時代を感じるためのマスターシーン。意味はなし)


浮浪者

食べ物などを差し入れれば快く答えてくれる。

酒が飲みたいなあとか言ってる。酒を買いに店に行くなら大正っぽい雰囲気のところへどうぞ。電気ブランなんていかが。

晶子を連れていくのはあまり得策ではない。連れていくと、あそこはクラブも兼ねていますからねえなどとごまかす。もしかしたら翌日あたりにこの浮浪者が消えているかもしれない。

一日目に出会えていたら、一日目夜の被害者はこの浮浪者にしてもよい。

カフェー・ヴィザージュについて

「いつもかも明るくてうるさくて。アヘンでもやってんじゃないのか。大勢の人間が集まって何やらしているようだ」

「店主の布由乃を中心に、何やら各界の著名人が集まっている。昔から変なことばっかしてやがる。近づかないほうが身のためだぜ」

一日目夜

探索者が夜帰宅していると、薄汚れた着物を着た浮浪者が横を通る。目星を振っても単なる浮浪者。(事前にヴィザージュ近くに住む浮浪者とあっていれば彼かもしれない)精神鑑定でだいぶ参っていることがわかる。表情が暗い。

浮浪者が路地裏に入ったあたりで聞き耳。何か小さな、くぐもったような悲鳴が聞こえる。

路地裏には誰もいない。草履がひとつ落ちている。どこかに消えたかと思いつつ嫌な予感が消えない。目星-20成功で空を飛び去る何か巨大な鳥のようなコウモリのようなものを見かける。

アイデア(聞き耳も目星も成功の場合+10)で、あの鳥のようなものに連れ去られてしまったのでは?SANチェック 0/1d3

新聞などを見ても浮浪者がいなくなったとしても騒がれることはない。


二日目夜

探索者が家で休んでいると、ガラス窓に影が現れる。外をのぞくと、そこには夜鬼の姿が。この探索者は、晶子のことを一番疑っていた人物。もし士族の家で呪文を手に入れていたならば呪文を持っている人物。

「ぬめぬめとした皮膚と鋭い角。醜い大きな腕はまるであなたを手招くように蠢き、トゲのついた尾がゆらゆらと揺れている。それ、を生き物であると理解したあなたは視線を上げるだろう。しかし、そこにはあなたが期待したもの――顔がなかった。顔のない、コウモリのような異形が、目もないくせにあなたのことをじっと観察している。じっと」

SANC 0/1d6

誰かが飛び込んで来るか、DEX13との対抗に成功しなければ、30パーセントの組み付きを受ける。その後30パーセントのくすぐりを受けてしまうと抵抗する意思をなくしてしまい連れ去られる。ロスト。

人が入ってきた場合夜鬼はすっといなくなってしまう。逃げた場合、夜鬼は家の奥深くまでは入ってくることはないだろう。ただしこの探索者は一晩中夜鬼の存在におびえ、眠ると悪夢を見ることになる。

夢の内容は、猪俣の「災禍への追悼」のようなもの。地下へ続く階段を下りていくと、そこにあどけない少女がいる。憔悴した様子の彼女はあなたに笑いかけるが、あなたはその笑顔に言いしれない恐怖を覚える。なぜこんなにも恐ろしいのだろう。この子のことを、自分はたしかにあいしていたはずなのに。少女の顔をよく見ようとするならばアイデア。その顔は知り合い――晶子のものにそっくりであった。


猪俣の家

著名な作家の生家として保存されている。が、中は殺風景なもの。図書館や知人に寄付されているため猪俣の私物はほとんどない。し、寄贈されたものも情報として目新しいものはない。まだ本を読んでいなければ図書館に行かせる。

私物がどこへ寄付されたのかを晶子に聞けば、安納のもとにいくらかが預けられていると答えるだろう。貼ってある張り紙に安納の名前があり、資産家を調べれば安納の家を知ることができる。

「災禍への追悼」を読み、地下があるという情報を手にしていれば、仏間の床の間の下に隠し扉を見つける。地下といっても六畳ほどの小さな部屋。最低限の生活ができるものが置いてある程度。布団など居住のために必要なものがそろった空間と、机と小さな棚の置かれた空間とにわけられる。布団のあるほうは奥まっており、檻のようなもので区切られている。鍵は掛かっていない。(無理に開けたのではなく鍵であけた、というかんじ。布由乃が開けに来た)棚には猪俣の作品とほか資料。図書館で日記発見。

10年前の日付。

「あきらはずつと様子がおかしい。神や仏やと毎日手を合わせている。声をかけても上の空、私の言葉などひとかけらも届いていないようである。ヴィザージュへ行く時だけ彼女の瞳に光が宿る。あのカフェでわずかなりとも彼女の心が癒されるならばよい。小説をかかなければ。彼女を慰めたい」

「これはどうしたことだ。あの恐ろしい災いを生き残ったというのに、ついに耄碌したか」

「地下に隠す。泣いている声がする。夜毎頭が痛む。あれはあきらか、   晶子 おまえか」

「おかしな夢ばかり見る。これでは怪奇小説だ」

「本が売れる。頭が痛い。私は誰を慰めればよい」

「羽音がうるさくて眠れない。悪夢ばかりを見る」

「木を隠すなら森の中。本を隠すなら本の中。紙を隠すなら紙の中」

「黄泉よりの迎えだ」

五年前で終わっている。鬼気迫る文章におそろしいものを感じ、0/1のSANC

精神分析でかなり狂気に近いことがわかる。

机の上にはボロボロの紙が一枚。つたない筆跡で、いくつか文章。

「だれなの どうして わたしを とじこめるの」

「だして だして」

「きらいきらいきらいきらい」

「出られた。なのに、あの子がいない。かわいいあの子、迎えに行かないと」

(記憶が戻っているため、最後だけ漢字が使えている)

布団に目星で、下から本が出てくる。国生みに関する内容で、折り目がついているページがある。イザナミについて。

「国生みを行った神イザナミは、火の神に焼かれ、焼けただれた肌と腐乱した体を持ち夢の世界へと逃げ込んだ。彼女の夫は逃げ去り、子である鳥たちのみが彼女を庇護する」

晶子に聞くと、ショックを受けた顔をしてわからないと答える。心理学で嘘だとわかるが、心理学を振ったり怪しんだ行動をとるとこの後の夜鬼の標的にされる。

あきらというのは母の名だと教えてくれる。(このあたりで晶子は探索者を処分しようかと考え始める)


猪俣の家2

呪文を持っている状態で猪俣の家の地下を訪れる、もしくは猪俣の家の地下で彼の日記を見つけた状態で呪文を手に入れると、晶子は猪俣の家へ探索者を誘い、呪文を奪い取る。

「イザナミさま、晶子を、晶子を返してください」「若さなんていりません。記憶だってどうでもいいわ。あきらはこのまま死んでもよいのですどうか、晶子を晶子を」と泣き笑いしながら呪文を唱え始め、どこからか怪しげなローブを身にまとった人間が3人現れ、晶子を守るように取り囲む。(カフェー=ヴィザージュに通う、布由乃を信奉する魔術師。イブ=スティトルを召喚するのを手伝おうとしている)一人は晶子に寄り添い、MPを共有する。この一人と晶子は回避をしない。

ローブの人間のステータスは以下。

STR:9 CON:12 DEX:12 SIZ:11 耐久:12

仕込み杖:50%(1d6) 回避:24%

猪俣晶子(あきら)

STR:8 CON:12 POW:13

DEX:9 APP:12 SIZ:12

INT:16 EDU:16

耐久:12 MP:13

1d3ターンの間に晶子を取り押さえるか、意識不明にさせないと呪文は完成する。しかし本来この呪文は13人で行って成功するもの。それをこんな少人数で行っては失敗するほかない。イブ=スティトルではなく、ザ・ブラックが召喚されてしまう。「黒っぽく、ヒラヒラとした破片のようなそれは、無数に現れ踊り狂う。まるで雪でも舞うかのような、一見して美しいその景色は、しかし明らかに現実のそれではない。意志をもった破片は、まるで獲物を狙うかのようにこちらの様子を窺っている」SANC 1/1d6

ザ・ブラックは魔術師と晶子を取り込んでしまう。幾重にも幾重にも破片が張り付き、その中からがぼがぼとおぼれる音がする。やがて彼らの体は力尽き、ばたりと倒れこむことだろう。破片は再度ヒラヒラと舞いあがる。その下で、もがき苦しんだままの表情で息絶えた死体を目にし、SANC 1/1d3

ここで聞き耳。成功で、上階から大きな音が聞こえる。まるで何かを破壊し、この部屋へ流れ込んでくるような...

DEX×5で上の階へ逃げ切れる。何日も続いた大雨は洪水をおこし、室内にまで上がり込んでいる。ごうごうと唸りを上げて、雨水が地下室へと流れ込んでいく。奥の部屋まで逃れれば、探索者に害があることはないだろう。

ふと外を見ると、大きなコウモリのような影が飛び去って行くのが見える。


ザ・ブラックを召喚する前に晶子を片付けた場合。

魔術師三人に加え、夜鬼二体が戦闘に参加する。はじめて出会うPCはSANC 0/1d6

倒し終えたところで聞き耳。成功で、上階から大きな音が聞こえる。まるで何かを破壊し、この部屋へ流れ込んでくるような...

DEX×5で上の階へ逃げ切れる。何日も続いた大雨は洪水をおこし、室内にまで上がり込んでいる。ごうごうと唸りを上げて、雨水が地下室へと流れ込んでいく。奥の部屋まで逃れれば、探索者に害があることはないだろう。

エンディング

布由乃は、探索者たちが洪水から逃れた後にカフェー=ヴィザージュに向かうと跡形もなく姿を消しているだろう。猪俣の作品はそのまま残されており、作品の山の上に一冊のノートが残されている。猪俣が娘を震災で亡くしてから死亡するまでのエッセイのようなもの。

震災で、娘である晶子が死んだこと。その後、妻であるあきらは精神を病み、カフェー=ヴィザージュに通っては宗教にのめりこむようになったこと。晶子の死から二年後、ついに発狂したあきらが、まるで晶子のような幼い姿となり記憶も失ってしまったこと。彼女が死亡したことにして地下に監禁し育てたこと、またそのころから悪夢を見るようになり、それをテーマに小説を書き始めたら売れるようになったこと。猪俣がだんだんと狂気に染まっていく様子と、最後に「あきらが心配だ、1人にはしておけない。黄泉を下るならばどうかともに」と書かれている。

この遺作、いや遺言をどのように扱うかはPCに任せる。世に売り出してもよい、安納に売り払ってもよい。しかし、十紀子に渡した場合は、これは世間にさらしてはならないものだと出版を断られるだろう。


解説

12年前:猪俣、小説家としてデビュー。蝶野ヒロという名前。売れない。

10年前:関東大震災が起きる。当時五歳の晶子、被災し死亡。あきらがヴィザージュに通うようになり信仰が始まる。

8年前:あきらのイブ=スティトル召喚。発狂とともに、記憶と年齢を大部分失い、晶子が生きていた場合と同じ年齢(7歳)くらいの見た目となる。猪俣はあきらを死亡したとし地下に監禁。「災禍への追悼」を書く。あきらが意図せず従えた夜鬼の影響で悪夢を見るように。それを小説として書き始め、売れるようになる。

5年前:猪俣発狂し仏間で首を吊る。布由乃により密かに地下から出されたあきらは記憶を取り戻し、ヴィザージュに身を置く。

情報を集めながら様々な人に出会って話を聞き、猪俣の過去、あきらや晶子について知っているのが十紀子のみであることに気付く必要がある。

行動によるが一か所につき一時間ほど経過として適当に時間進めてください。


SAN値報酬

生還:1d10

ザ・ブラックの召喚に立ち会った:1d4

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